『はぁ...あれから2日かぁ』
私、佐倉は体の底から出たため息を止めることなく吐き出した
まわりにいる皆は和気藹々と楽しんでいる中、私は一人気分が落ち込んでいます
『佐倉・・・そう気を落とさずに』
そう言って、友達の華翠ちゃんが私を気遣ってくれた
でも、でもね、やっぱり彼氏と一緒にいれないって結構苦しいのよ
 
 


修学旅行、その名を聞いたらカップルは誰だって思うだろう。
だけど、私達に春は来なかった・・・(今は冬だけど
来年の子達のためにも、私達が我慢しなくっちゃ!!!と意気込んでいたけど...
『暇だねぇ〜・・・』
焼餅を口の中に投げ込みながら話すという器用な事をしながら、赤也君が呟いた
田舎で、見るものといえばお寺だったり鹿さんだったり・・・私は別にいいんだけど、赤也君にとっては暇つぶしにもならないみたい。
そういえば赤也君がクラスの男子とお話してる所って見た事ないなぁ。もしかして...
『赤也君、今までずっと一人でいたの?』
その問いかけに、まるで当たり前かのように『あぁ』と返事をした。
あぁって・・・クラスの男子達は赤也君を恐がって近寄ろうともしない。
ほら今も。目が合っただけで引きつった悲鳴を上げている。赤也君は気にしていないみたいだけど。
ただ腹減ったぁ...って言ってるだけで。お餅じゃ足りないのかなぁ?
『赤也、あんた何ぼ〜っとして!!』
赤也君の後首に、勢いよく手刀が落ちる。鈍い音とともに赤也君は蹲った。あれはきっと痛い。
赤也君と話してるのは、今まででも白ただ一人しか見た事がない。
きっと赤也君も一人で嘆いたに違いない。華翠ちゃんが同じクラスだったのでよかったね
・・・でも痛い思い結構してるけどね。
『ってぇ...暇なんだから仕方ねぇだろぅが?!!』
『暇なんだったらその辺でトレーニングでもしてなっ!!なんか今のあんた見てるとイライラする』
『だったら見るな!!それに俺はトレーニングなんてしねぇ〜んだよ!』
その言葉を発した途端、その辺にいたクラスメートが一斉にこちらを向いた気がしたけど...気のせい?
この口喧嘩はしばらく続きました・・・ねぇ、私と白の話は?






『はぁ...こんな所まで来て雑用ぅ?』
只今の時刻、22時です。普通なら消灯時間で皆様お眠りになっているかと・・・
でも私は、この寒空の下、先生に頼まれたその名も雑用という事をしております。
何でもこの大量にある用紙を隣の宿泊所にいる先生に届けなければいないとか。
それの他にも、我が担任には仕事が溜まっているとかで...そこで私が呼ばれました。
はい、名ばかりの学級委員です。雑用ばかりしているせいか、最近力が強くなりました
(前からです
『えっと、この道を左・・・だっけ?』
地図があんまり読めない私は、ほとんど野生の勘を頼りに進んでいます。
あってるのか間違ってるのか聞かれても、今の私にはわからない。
ただ思うが方向に進んでいます・・・私はきっと愚かでしょう。
はっきり言います、私は道に迷いました。
普通考えられない。誰もいないこんな田舎道で迷うなんて・・・
しかも今は夜。女の子一人が出歩くにはあまりにも物騒すぎる。
『うぅ...なんか色々考えちゃうよぉ』
遠くの方で鳴く鳩の声、風が木々を揺らし嫌な音を鳴らす。
昼だったり、友達がいれば何とも思わないこの状況だけど、今の私にとっては最大の恐怖といっていい。
早く先生にこの用紙を渡してしまおう。少し立ち止まりかけていた足を少し早足に動かす。
道はわからないけれど、そう遠くはないだろうと勝手に決めつけ私は歩いていった。


でもそんな上手いく訳もなく、着いた場所は
『ここ、さっきも通った...よね』
周りを木々が囲うこの道。道は二手に分かれ、一つの道には大きな岩が置いてあった
それを目印に、私は完全に道に迷った事を確信した。
まさか修学旅行に来てまで道に迷うなんて、立つために溜めていた力が一気に抜け、その場に座り込んだ
かっこ悪い・・・高校生がこんな所で迷子?っというか遭難?
きっとクラスの笑いものだろう。ううん、学校中の笑いものだ。
口々に皆言うんだろう、馬鹿だなぁって...心配したよ〜!って。恥ずかしいよ。
駄目だ・・・何だか目頭が熱い。息が荒い。どうしよう...止まらない。
『う、うぅ・・・どうしよぉ・・・!!』
段々と息が上がっていく。体が震えだしてきた・・・自分では抑えきれない





がさッッ!!!!





ふと、後ろの方で物音が・・・誰か来たんだろうか?
私は急いで目をこすり、座り込んでいた体を立たせる。
『だ・・・誰、ですか?』
戸惑いながらも物音の主に声をかける。一拍おいても返事はない。
相手も不思議がっているのだろうか?それとも同じように迷子?それとも・・・
『・・・佐倉美青を保護しに参った者です』
私の目の前に現れたのは、どこから見ても間違える訳もない人。
私の知ってるサラサラな銀髪、優しいその笑み。その人は
『白・・・白ッッ!!?え、何で?どうしてここに...え、保護って?あれ?』
『佐倉があまりにも遅いから、先生が言ったんだよ。迎えに行けってね』
ゆっくり白は私の方へと近付いてくる。私はまだよく状況を理解していない。
ふっ、と白は持っていた上着を私に着せてくれた。よく考えてみてばこんな寒い日に上着も着てない。
初めて寒いという感覚を感じた。白の着せてくれた上着に縮こまりながら体を抑える。
『きっと佐倉の事だから、道に迷ってるだろうって思ってこの辺探していたら・・・案の定。』
ゆっくりと微笑んで頭をなでた白を、私は凄いと思った。
私は恥ずかしいとかそんなの忘れて、白の中へと飛び込んだ。
だって、恐かったんだもん。だって、白は私のヒーローなんだもん。
『そんなに寒かった?』
変な所鈍いんだから。でも...少しでもこのままでいたかったから
『うん、とっても』
白がぎゅってしてくれる。私はこの時が一番好きだから、本当に愛されてるんだって思うから...ごめんね、嘘ついちゃった。





『でもどうしてここだ!!ってわかったの?』
『わかるよ、佐倉の事ならね』
駄目ですよ反則ですよ白さん、その笑顔でその台詞は・・・!!!
もう彼氏馬鹿な彼女って思われてもいいです。だって本当に彼氏馬鹿ですから。
『佐倉...ちゃんと地図の見方、覚えような』
『・・・はい』
その後きちんと先生に到着したと報告して、用事を済ませました。
想像通り道に迷ったな!!と先生も大笑いしていました。私って一体...。
でもそれで白に会えたんだもん。少しだけ方向音痴な自分を褒めてあげました。
え、帰りは大丈夫だったかって?・・・大丈夫だと思う?この私が。
だから白が、もう迷わないようにって宿泊所まで送ってくれました。先生のお墨付きです。
宿泊所に着いた時、帰りが遅いと心配してくれていた華翠ちゃんが飛びついてきた。
後ろには、顔に何故か何枚も絆創膏が貼った赤也君がいた...ごめんね赤也君。



『ふぁ...まだ心臓どきどきしてるょ〜』
『久々に会ったんだもんね、そりゃ興奮もするよ。あれ佐倉、その上着は?』
やっと私は白に借りていた上着の存在に気がついた。
そういえばあの時貸してくれて、帰りも寒いから着てろって言ってくれて...
『へぇ...白のねぇ...。』
『べ、別に深い意味はないのよ!!ただ、上着着ていくのを忘れて...それで寒いだろ?って貸してくれて、ただそれだけ!!それだけなのよ、うん』
最後の部分は自分に言い聞かせるようになってしまった。
だってそうでしょ?それ以外になにがある?ないわよね?!!
私は恥ずかしさを隠すために、畳んであった布団をしきはじめた。
布団は見るも無残な形になっているとも気がつかずに・・・
『ふ
~ん...じゃあ佐倉達まだなんだ』
『ま、まだとは一体何がでしょうか華翠ちゃんっっ?!!』
『そりゃぁ今はキス以外ありえねぇだろ?』
びりっと嫌ぁ〜な音が響いた事なんて気にならない。だってだって、今そんな台詞言います普通!!?
・・・ってあれ?今の声は赤也君。普通に会話してるけど、何か違う気が
『お前ら何の話してんだよ...』
『そういうあんたは何堂々と女の部屋に入り込んでんだぁーーー!!!!』
そうそうそれ!それが言いたかったのよ。何で赤也君がここにいるんだろう?
そんな事考えている間に赤也君はヘッドロックをくらって失神寸前。助けるべきか放っておくべきか...
でも今助けたらさっきの話に戻りそう...私は自分をとりました。ごめんね赤也君。
『うぎゃぁーーーーーー!!!』







最終日の朝、私達はまず先生の怒鳴り声を聞きました。
夜中に何五月蝿くやっているんだと...。
あの断末魔でクラス全員どころか、女将さん達まで起きてしまって大変な騒ぎになった。
火事だの泥棒だの、赤也君の霊が俺達を消しにきたなど...静寂を取り戻すのに時間がかかった。
この騒ぎの原因、赤也君が私達の部屋にきた理由は明日の予定が書いてある資料を持っていたため。
班のリーダーである華翠ちゃんが持つべき物を自分が持っていては、また痛い目に合うと思って決死の覚悟で持ってきたんだとか。ちなみにノックはしたらしい...ごめんね、気がつかなかったよ。
あと布団破った事については、何も言われませんでした。黙秘ってやつかな?
『うぅ...まだ耳がキンキン言ってるよ〜!』
『仕方ないよ、私達が騒いじゃったのが悪いんだし。だから...だから赤也君の胸倉掴んでるの離してあげて。苦しそうに唸ってるし...。』
『あ、あぁ...ごめんごめん。つい癖で』
『その癖早く直せ!!』
く、癖ですか・・・これが。
とりあえずよかった。二人共昨日の話題は忘れてくれてるみたいだ。
二人はまだなのか...って。
うぅ...これが健全な高校生の話題なの?私ってばおば様になっちゃったの?
・・・忘れよう、昨日の話題の事は綺麗さっぱり忘れよう。
でないと、変に意識しちゃうよぉ〜!!!華翠ちゃんの馬鹿ぁ・・・!!!




『で、どうなんだよあの二人は』
『う〜ん...まだまだだね、ほんわかカップル程度』
『へぇ...これからってか』
『でも佐倉も昨日言った事で意識し始めるから...』
『進行あり?って事も考えられるな...佐倉の奴、わかりやすい性格だしな』
実は結構覚えられていたりして...。
 





『あれ、雪村...お前上着は?』
『迷子の子猫にあげたよ...』
くすっと静かに笑った彼「雪村白」は、まるで策士のようだった...
byクラスメート






『終』




後書き

終わった...やっと終わった修学旅行。
旅行長ぇょ!!!!って自分でツッコミ入れてます...はぃ、阿呆です。
ってか意味不明な感じで終わってしまったこの修学旅行編。
結局何が言いたかったんだ自分?的な気分でございますです
(><;)
とりあえず甘甘旅行ってやっぱりしたいよね?って事で...ね、全国の女子の皆様!!!
まぁ、今回で佐倉&白はとても愛が深まった?と思っております。というか深まって?!!
(
ありま、なんか「?」多いぞ...?
(Д)
・・・これからも二人の応援よろしく!!!(