トリック・ォァ・トリート
今日も子供達は尋ねてきます
大好きなお菓子を求めて
ほら、耳を澄ましてごらん
そんな子供がまた一人
近付いてきました・・・






『メビウス・ハート
ハロウィン・ォァ・エイプリルフール』

「トリック・ォァ・トリート!!」
この言葉を聞くのは何度目だろう?
口の中で泳ぐ飴玉を遊ばせながらぼ〜っと外を眺めると、楽しそうに子供達は仮装をして街中を歩いている
その手には大量のお菓子が入った籠を持っていた
そうか・・・そういえば今日だったな、と今更ながらに気付く
お化けの仮装をして、家々を回り
『トリック・ォァ・トリート!!
(お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ!!)
と言い、家々の住人からお菓子をもらう行事・・・ハロウィン
子供としては嬉しい行事だが、大人からすればたまったもんじゃない。
「まぁ、俺には関係ないけどな」
少年は欠伸交じりに、苦笑する。そしてまた眠りにつこうとした・・・が
「クラウンッッ!!」
いきおいよく扉が開いたと思えば、自分の名前を呼ばれてうっすらと片目を開ける
そこには、自分がもっともよく知る人物が息を切らして立っていた
「なんやねんシャイ、俺は眠たいの・・・ふわぁ〜」
「トリック・ォァ・トリート!!」
「・・・へ?」
彼女から発せられた言葉に、マヌケにも眠りかけていた自分の体が地面から離れた
発せられた言葉の割りに、顔は真剣・・・というか結構気合入ってる人っぽい
「も一回お願いデキマスカ?」
真意を確かめるため、棒読みで頼んでみる
シャイはちょっと詰まりながらモゴモゴと何かを言った後、こう言った
「トリック・ォァ・トリートッッ!!」
間違いではなかったようだ
彼女の口から発せられた言葉は、やはりハロウィンを指す言葉で
自分もあの外にいる、お菓子を貰って喜ぶ子供達を微笑ましく見る大人の立場に立ってしまった
しかし、今自分の手元にあるお菓子と言えば口の中で泳ぐ飴ぐらい
『えと、シャイちゃん・・・君は何を思ってその言葉を?』
怖い、子供の無邪気さをここまで怖いと思った事はなかった
もし子供に「お菓子なんてない」とでも言えば、きっと泣き喚き五月蝿くて人の目も気になるんだろう・・・
シャイはそんな事しないだろうけど・・・きっと暗い泣きそうな顔するんだろうなぁと想像する
・・・それはやっぱり怖い
『さっき、外で男の子が、あたしに、言ってきたの』
 
 
『トリック・ォァ・トリート!!』
『え、えぇっっ?!!』
『ねぇ、お菓子頂戴よ〜!』
『お、お菓子・・・?』
『何、知らないの?う〜ん・・・あ、もしかして君も今からもらいに行くの?』
『え・・・うん』
 
 
『って何で頷いてんねん!!』
『だ、だって・・・』
シャイは顔を赤く染めながら俯いてしまった・・・
きっとその場のノリで言ってしまったのだろう。
長い付き合いだ、それぐらいはわかる・・・でも思わずツッコミをしてしまったのだった
『で、俺にどうしろと?』
わざと大きくため息をついて、聞いてみる
さっきまで俯いていた頭を上げ、シャイは目をキラキラさせながら聞いてきた
『今日ってお菓子もらえる日なの?』
うぐっ、とクラウンは答えに詰まった・・・正解はYES
けど、ここでもし正直に答えればどうなるだろう?いつも使わない空っぽの頭を精一杯使って考えた
考えて出た結果が・・・これだった
『えっとなシャイ・・・これは子供だけが楽しむ日であって、大人は楽しんだあかんねん』
『大人って?』
また、見事に質問が帰ってきた・・・クラウンはまた唸り始める
辞書で引けば大人とは「物事に対する思慮分別が、十分にある」である
つまりは、良し悪しの判断が出来ればOK!って事で・・・それは十分シャイにはある
自分が子供だと思わせる教え方ってないだろうか・・・
『クラウン・・・?』
シャイが不思議そうに顔を覗きこんできた。
これはどうやって誤魔化そうか・・・クラウンの頭はそれでいっぱいだった
『あ、えっと・・・大人っていうのはぁ・・・・・・・』
『大人って、いうのは?』
『・・・俺やお前みたいな奴の事やっ!!』
苦し紛れで出た言葉・・・自分で言っててすごく阿呆らしいと思った
シャイは首を傾げ、クラウンの言った事を繰りかえし呟いてくれた
シャイを騙すのは心が痛い・・・が、これだけのためにお菓子を町まで買いに行くのはもっと嫌だ
というか今の時間だと、もう店はほとんど閉まってるだろう
『そうそう・・・だからな、大人はゆっくり家でくつろいどくねんって』
そう言ってクラウンは、再び欠伸をし眠ろうとした
シャイは何度も何度も同じように呟く・・・その顔はまだ納得のいかない顔だった事をクラウンは気付いていた
しかしいつかは納得してくれるだろうと、甘い考えを抱いていたのだ・・・が
 
 
『じゃぁ、どうしてクラウンは、飴、食べてるの?』
 
 
クラウンは、その言葉に内心ビクついた。
さっき、外で遊んでいた子供がふざけて投げていた飴がたまたま入ってきたので食べていたのだが・・・
まさか、そんな事言えるわけがない
何故自分だけ食べたのだと怒られる・・・そういう所はお互い子供なのだ
クラウンはゆっくりと、振り返り答えた
『・・・たまたま?』
『あ、ずるい
!!自分だけもらって、食べたんだっっ!!』
『ち、違う!ほんまにたまたまであって・・・って泣くな泣くなっっ!!』
目の前にいるシャイは今にも泣きそうな顔で立っていた
お菓子といえば、めったに食べられない物であるためクラウン達のなかでは貴重品に近かった
クラウンもお菓子は好きといえば好きだが、別段大好物というわけではなかったが
シャイは、初めて食べた飴の味がとてもおいしかったらしくて、大のお菓子好きとなったのだ
クラウンはしまったと思った・・・なんとなく食べた飴が、大惨事を生むとは
『ご、ごめんてシャイ・・・』
ついに泣き出してしまったシャイを、ただぎゅっとするしか自分には思いつかなかった
クラウンは、シャイが来る数分前の事を走馬灯のように思い出していた
子供が飴を放り投げきて、それが自分の目の前に落ちてきたあの瞬間・・・
何故自分は食べてしまったのか、何故置いておかなかったのか
『・・・シャイ?』
気がつけばシャイは泣き疲れて眠ってしまっていた・・・
まだ目元には涙が残っていて、それを起こさないように手で拭う
このまま立っていても仕方がないので、ベッドにシャイを運んだ
今日は冷えるだろうと少し厚めの布団を着せてやると
『・・・ばかぁ』
と、寝言で言われてしまった・・・
クラウンは呆気に取られながらも苦笑する
本当に自分はシャイには甘いな、とクラウンはため息をついた
 
 
 
『ん〜・・・?』
しばらくして目が覚めると、いつの間にか自分のベッドで寝ていた事に驚いた
布団まできっちりかけられていて、電気も消してある
きっと泣き疲れて寝た自分をクラウンがここまで運んだんだろう・・・と思った
『クラウン・・・?』
そういえば、その本人はどこにいるのだろう・・・上だろうか?
上に行こうとしたけど・・・もしかしたら閉まってるかも
祭壇がしまっていれば、ここの通路を使っても上には上がれない
他に上にいける道があるのでそっちにいく事にした
 
外へ出ると、まん丸の月と無数の星が光輝いていた
風も、シャイが外に出ていた時より少し寒く強くなっている
『・・・早く、中に入ろう』
シャイは小走りで教会へと急いだ
 
教会に着いて、重たい扉をゆっくりと開けていく
すると、いつもと同じように立っている女の人の銅像
今、その銅像を見上げる男がいた
いつもなら隠れる所だけど、今そこにいる人物は自分がよく知っている人物だったため言葉を投げる
『クラウン・・・』
『・・・へ?何で外にいるん?』
少し反応が遅れたが返事はしてくれた
自分の声は、きっととても小さかっただろう・・・自分の事だからよくわかる
『そこ、閉まってたから・・・』
祭壇を指差すとクラウンは、あぁ・・・と手でゴメンのポーズをし、苦笑した
別にいい、と小さく聞こえないように呟いてクラウンの所へと走っていく
後ろで扉が閉まる音が聞こえる時には、クラウンの中へと入っていた
『クラウン・・・何処行ってたの?』
『あぁ・・・ちょっと用事でな、シャイの体暖かいなぁ』
クラウンは悪戯な笑みを浮かべて、やっぱ子供体温なんかなぁ、なんて言いながらシャイをさっきよりも強く抱きしめた
すごくむかついた言葉だったけど、素直に受け入れる
シャイも同じく、クラウンの冷えたはずの体が暖かく感じたから・・・
『あ、せや・・・さっきの言葉、も一回言ってみ?』
『さっきの、言葉?』
そっ!とクラウンは笑った。この笑顔には何かあるとは思い、言おうか言うまいか迷ったが・・・
言ってみても何かあるとは思えないと、小さく呟いてみた
『トリ・・・ォァ・・・ト』
『ん、聞こえへんで〜?』
『・・・トリック・ォァ・トリート!!』
もう自棄になって大声で言ってみる
声が教会中に響いて、自分の声に驚いてしまった
しばらくの間、クラウンは何も言わずにいたので内心どきどきだった
『く、クラウン・・・』
『はは、よく出来ました!』
そう言うと、何やら背中の方から何かを出しシャイに渡した
甘い匂い・・・この匂いはとてもよく知っていて、大好きな匂い
『これ・・・』
自分の手には、グルグルの大きな棒付きキャンディが握られていた
小さい時に、クラウンに初めて買ってもらったキャンディ・・・
『さっき嘘ついたお詫びや・・・それに悪戯されたら困るしな』
と、苦笑しながらウインクしてシャイを見つめた
シャイはクラウンとキャンディを交互に見つめ、嬉しそうに微笑んだ
『ありがとう・・・』
 
実はあの後クラウンは、町で必死に開いているお菓子の店を探しシャイの好きなキャンディを泣けなしのお金で買っていたなんて・・・シャイは知るはずもない
いや、別に知る必要もないのだけれど・・・

  

  

  



後書き

無駄に長いです・・・><;
えっと、ハロウィンで子供に嘘をついてはいけません 
byクラウン
本当に今回は大変な役のクラウンでした・・・
シャイちゃんよかったね、飴貰えてvv
・・・そういえばあの黒いローブを被って店に入ったら、店の人恐怖ですよね?(笑

   
   
     



 




その後・・・
  
クラウン『・・・でもシャイ、お前もう18歳やねんからお菓子離れしぃや?』
シャイ『うん・・・気をつける、でも、おいしいもん』
クラウン『・・・まぁ、ええか』
エルフ&クーリエ『『18才
——————っっ?!!』』
クラウン『ちなみに俺14歳やで〜vv』
エルフ&クーリエ『嘘っっ!!!!!?』
   
   

  






  
   
クラウン&シャイ『『うん、嘘』』
クーリエ&エルフ『・・・・・・』

  

  




  
『完』