私は願い続けた
この日もそう
一つの紙切れに
私は願い事を書いたの
どうか・・・会わせて下さい
どうか・・・叶って下さい
『特別編:星が作った橋に向かって』
エルフとクーリエが出会う数年前・・・
「うわぁ〜!!星が綺麗だね」
まだ小さかったエルフは、窓から夜空を眺めていた
横でじぃが優しく微笑む
その笑顔を見てまたエルフは微笑むのだった
「きっと織姫さんと彦星さん会えたよね?」
今日は7月7日・・・
街の皆が七夕だと騒ぐ今日
エルフも七夕という行事を耳にし、早速じぃに笹を用意してもらった
七夕の日というのは、織姫と彦星が一年で一度唯一会える日だとかで
そしてその日、きちんと天の川という星の橋を渡って会えれば・・・笹に吊るした紙に書いてある願い事が叶うという
それを聞いたエルフはもう大はしゃぎ!!
早速願い事を考えた
「ほ〜らッッ!!じぃも書くのvv」
じぃにまで紙を渡す始末・・・じぃは少し苦笑いを浮かべた
今のじぃにとっての願い事は、エルフの笑顔がずっと続くこと
それは今だけではなく、これからもずっと
「もう願いが叶っていますから」
そう言って、じぃはエルフに紙を返す
エルフは残念そうに、しかし少し嬉しそうに紙をもらう
「よかったね」
また笑顔でエルフは言った
この笑顔が何よりの宝物・・・この宝物が消えぬように
じぃは心から願うのでした
「う〜ん・・・」
しかし、エルフは頭を悩ませていた
じぃが何で悩んでいるのかと聞くとエルフはこう答えた
「お願い事が二つあるの・・・どうしようか迷っちゃって」
持っているペンを額にあて悩み続けるエルフ
どんな願いで迷っているか聞くと
「言ったら叶わない気がするから言わない」
の一点張りだった
ほとほとじぃも困った
困っている願い事がわからなければ、一緒に考える事も出来ない
「う〜ん・・・こうしたらダメよねぇ」
エルフはしばらく悩み続けた
かれこれ30分が経過する・・・
それでもエルフの悩みは解けないようで、まだ唸っている
じぃは、助言になるかわからなかったが自分の思う気持ちを告げてみた
「姫様・・・」
「ん、何じぃ?」
こちらを向くエルフの表情はやはり眉間に皴がよった悩み顔
じぃはエルフに笑顔でいてもらいたいのだ
先ほどもいったが・・・
「今姫様が何で悩んでるか、じぃは存じませんが・・・姫様が今一番望む事を書けばいいのでは?確かに、願い事はたくさんあるとは思いますが、一番はひとつしかない筈です。一番のものはきっと笑顔が生まれます」
自分でも何を言ってるかわからないが、それでも自分の言いたい事は言った
エルフもその言葉を聞いて何を思ったか、持っていたペンが進んだ
よかった、じぃは一安心した
自分の思っていた事が伝わったんだと思ったからだ
「出〜来た!!」
エルフは持っていた紙を空へと高々と上げる
その紙に何が書かれているのか気になったが、先ほどのエルフの言葉
「言ったら叶わない気がする」
つまり見られたくないという事
じぃは自分のキモチをぐっっと押さえた
「じぃ〜、これ・・・つけてッッ!!」
まだ背の低いエルフには笹の枝は高かったらしく、背伸びをしても無理だったようだ
じぃはまた微笑んで、エルフの願い事を丁寧にくくりつける
「これで・・・願い事叶う?」
首を傾けてエルフはじぃに聞いてきた
じぃは答える・・・もちろん、と
「わたしのおねがいごとは、みんなのおねがいが、かなうことです。 えるふ」
「う〜ん・・・」
「・・・ど、どうしたんだ?」
エルフが珍しく何かに悩んでいる感じだったので
クーリエは、「変なモノを見た」な気分だった
あのエルフが何かに悩んでいる姿などクーリエは初めて見るのだから
「お願い事・・・どうしよう?」
エルフが見つめる先・・・それはひとつの紙
ただの、何の変哲もない紙だった
「それがどうした?」
クーリエは額に手をあてため息をついた
何事かと思えば願い事だと?
そんなのいつも瞑想めいてるエルフが、勝手に言ってればいいのに
最終的には紙に書いてどうする気だ?
「あれ、クー知らないの?今日七夕だよ!!」
「タナ・・・バタ?」
聞きなれない言葉にクーリエは首を傾げる
そこでエルフは得意げに、例えるなら天狗のように鼻を高くし話し始めた
「七夕っていうのは、織姫さんと彦星さんが一年に一度・・・天の川って星の橋を渡って会える日なのよ!!それでね、二人が無事出会えたら願い事を叶えてくれるのよvv」
瞳をキラキラと輝かせ、エルフは自分の世界へと浸っていた
そのエルフワールドをブチ壊すため息・・・クーリエだ
エルフはエルフワールドから本当の世界へと戻ってきた
「何よ〜!別にため息つかなくってもいいでしょ?!」
「ため息もつきたくなるさ・・・」
その後、何故ため息をついたか理由を聞いてもクーリエは教えてくれなかった
エルフは怒って、自分の願い事書きに戻った
何だか、悪い気分だったのでクーリエはいちおうエルフにどんな願いを書くのか聞いてみた
が、エルフからの返事はなく・・・余計に悪い気分だ
「エルフ・・・」
「にゃによ?!」
めちゃくちゃ怒っている表情・・・これは何かやばい気がする
「その・・・願い事・・・本当に叶うのか?」
「叶うよ〜!!じぃは今まで嘘ついた事ないもん!!」
全ての元凶はあのじぃさんかッッ!!
クーリエは優しく微笑む、あのおじいさんの笑顔を何故か恨めしく思った
あのおじいさんがエルフをこんな夢見る夢子にしたのかと・・・
「で、願い事・・・何にするんだ?」
「何よ?クーは信じてないんじゃなかったの?」
この恨めしそうな目、気分がよいか悪いかで言うと・・・かなり悪い
確かに自分は、ため息をついた・・・だがそれはきちんとした理由がある訳で
理由を話すと、このエルフの楽しそうな笑顔が消えそうで、逆に怒りそうで・・・話せない
だからと言って「信じるよ」なんて言う事も出来ない
「信じてない・・・が、悩んでるんならさっさと解決した方がいいだろ」
「う〜ん・・・それが、ね・・・2つあって」
エルフはそう言いながら、自分の紙を眺めた
真っ白な紙・・・自分の願いが書いてあるはずの紙
願いは二つ・・・ひとつしか書けない願い事
「どうしよう・・・?」
さっきまで怒っていた事など忘れ、クーリエに泣きそうな顔で相談してきた
こんな事で泣きそうになるなんて・・・クーリエも困った
「願い事って・・・」
「言えない!!」
エルフはいきなりクーリエの口を二つの小さな手で押さえた
うぐっ?!っと変な声をクーリエはあげた
「言ったら叶わない気がするから言えないの」
そんなの口で言えばわかる!!とクーリエは言いたいが、エルフの手が邪魔で言えない
なら、自分はどうすればいいのか?
悩んでる事がわからないのに・・・このまま悩みが解消するまで待ってろというのか?
そんな面倒な事、気分の悪い事はゴメンである
「ぷはっ!だったら・・・二つ書けばいいだろう?」
「それは・・・駄目なの、欲張っちゃ駄目なの」
エルフは、足元にあった石ころを拗ねた子供のように軽く蹴った
コロンと悲しい音を立てて石ころは転がっていく
クーリエは今日で一番深いため息をつく
「だったら、どっちが一番笑顔になるか・・・それで決めればいいだろう」
「笑・・・顔・・・?」
笑顔・・・それはエルフには無くてはならないもの
笑顔が一番だと、クーリエも思ったのだろう
「わかった・・・」
そういうとエルフはいつもの笑顔に戻ってあの真っ白な紙切れになにやら書き始めた
するとしばらくして、忘れていたかのように慌ててクーリエにも紙を渡してきた
「クーも書いて!!」
そう笑顔で言ってきた
いらない・・・って言ったらきっとまた頬を膨らまして、口を聞いてくれなくなるだろうか?
それとも、簡単に諦めてくれるだろうか・・・きっと前者だろう
そう確信したクーリエは紙を仕方なく受け取った
別に書く事などなかったが・・・適当に書けばいいか
「これでOK!!クーは?」
エルフはクーリエの紙を覗いてきた
自分は見せないと言いながら人のは見るんだからいい性格をしている
「えっと・・・え、こいつの世話から解放・・・って何よこれ!!?」
紙を破りそうな勢いで怒るエルフを尻目にクーリエは当たり前かというような態度をとる
こいつ・・・つまりエルフの世話をするのは嫌だって事だろう
エルフは怒るのも無理はない・・・がクーリエの気持ちもわからなくはない
「酷いッッ!!クーの馬鹿!!」
クーリエの耳が破壊されるんではないかというぐらいの大きな声
そうは言うものの、願い事を書いた紙はきっちり持っているエルフ
きちんと笹にくくりつけるのだろうと考えられる
「じゃぁ・・・あのおじさんに頼んでつけてきてもらうね」
自分とクーリエの願い事を持って、エルフは街中へと走っていった
そんなエルフを見て、クーリエは思った
「叶わないんだろうなぁ・・・」
もし叶うなら、世界中の人が幸せになる・・・
または一人が世界破滅を願えば、どうなる?
エルフには言えない・・・言っても無駄だろう
「おじさん!!これもお願い!」
笑顔で紙を渡すエルフを見て、クーリエは今日何度目だろう?ため息をついた
結局エルフの願い事はわからぬままだった
別にそれでもよかったのだが・・・
「叶うといいねぇ〜♪」
笑顔のエルフに、クーリエはまたため息をつくのだった
「私の願いは皆が笑顔になる事です!! エルフ」
後書き
はい、七夕編終わりました!!
これは本当に七夕なのか?って言いたくなるんですが・・・すみません;
これが七夕なんです><;
七夕って確か、昔話で父様に会えなくされる話でしたよね?
それで、一年に一回だけって事に・・・だったような;;;
うろ覚えですみません(ペコリ)
エルフの悩んでいた夢なんですが・・・一つは載ってるように
「皆の願いが叶ってほしい」です
もう一つは「天使に会えますように」が小さい頃、現在は「楽しい旅が出来ますように」です
どっちも自分の事なんですよ、だから迷ってたんです
自分か、他人か・・・それで他人を取りました!!
他人の笑顔が一番だと、言葉は違いますがクー&じぃから言われた気がしたようなので・・・^^;
っと今回も長くなった感想です!!
ここまで読んで下さった方、ありがとうございますvv
でゎでゎ織姫&彦星が今日出会える事、皆の願い事が叶いますように・・・