空気が悪い時って
気分まで悪くなるよね
嫌な気分・・・
ただただその空気と戦って
気がつけば
『力の存在』
リコリスの華が輝き咲き乱れる広場。
ここにくる時は、すごく綺麗だと思ったけれど・・・
草木がざわめいている、動物達がこそこそと逃げるように遠ざかる
そんな様子をエルフは見逃さなかった。こういう時に限って、エルフの勘はよく当たる
きっとここで何かが起こるだろう・・・エルフはため息交じりに思った
「どうした?」
そんなエルフを気にしてか、クーリエが声をかけてきた。
エルフもクーリエのそんな様子に一瞬戸惑ってから、ちょっと考え事とだけ告げた。
「お前でも考え事するんだな」
そんな事を真剣な表情でいうものだから、エルフは本気で凹みそうになった。
自分は、そんなに猪突猛進なのだろうか?確かに、考えなしで行動を起こしたりはするが。
だが、考え事くらい誰だってするだろう物である。
ふと、横でクラウンが笑いを堪えている。
(クラウン、バレてるよッッ!!)
何がそんなにおかしいんだと、腹いせに一発お腹に食らわそうとしたら、横にいるシャイが変わりに殴ってくれたようだ。
クラウンは、うぐっ!という変な声をあげてお腹を抱えこんだ。
「ありがとシャイちゃん!何かすっきりした!!」
エルフは満面の笑みだった。シャイは初め戸惑っていたが、あのかわいい笑顔で頷いた
そんな二人の様子を悲しいような嬉しいような、俺の事忘れてんじゃない?って目でクラウンは見ていた
そしてクーリエはいつものようにため息をついて、見ていた。
少し気になっていたんだが、シャイは小柄ながら意外に力は強いのではないだろうか?
今の攻撃といい、クラウンを投げた時の力といい・・・逆らわない方がいいとクーリエは自らに言い聞かせた。
「な、何だあいつら・・・全然緊張感がねぇな」
盗賊たちは、そんな子供たちの様子を望遠鏡で見ていた
男達から見える光景といえば、エルフ達が外に出て皆と追いかけっこでもして遊んでいるかのようなものだった。
さっきまで、自分達が優越感に浸っていたというのに・・・あんな子供達を見ていれば、何だか腹立たしい事この上ない。
「どうします兄貴?」
「・・・行くぞ!!」
「お、おぉーー!!」
ついさっきまで油断するなとか言っていた男が、ついにキレて強行突破
弟分達も戸惑いながらも後に続く。
「のぁーーー!来たで来たで!!」
何故か嬉しそうにクラウンは叫び、彼の足元でシャイちゃんは震えている。
クーリエは相変わらずため息ついて、エルフは周りをあたふたと見回すばかり。
「っと、エルフ・・・こいつ頼むわ」
クラウンは足元にくっついていたシャイを強引にエルフに預けてきた。
とりあえず、シャイを預かったのはよいものの・・・どうすればいいのかわからなくなった。
自分一人でこの子を守る事が出来るだろうか?確かに、自分はこの盗賊から逃げてきた奴だ。
でもそれは不意打ちというやつであって・・・もし自分が正々堂々戦ったら、絶対に負けるだろう事が予想できる。
あぁだこうだと考えてるうちに、まわりを何故か苛立っている盗賊達に囲まれていた。
ある男は息を酷く乱し、ある男は着地に失敗したのか足を痛そうに庇っている。なんとなく格好悪かった。
「どどどど、どうすれっての?!!」
「・・・お前はここでじっとしてろ」
そういうと、後ろからクーリエがエルフ達を庇うかのように前に出てきた。
気が付けば、エルフ達を中心に前にクーリエ後ろにクラウンと守るかのように囲っていた。
何だかそれだけで、急に緊張した体が安らいだ気がした。この二人は本当に頼りになる、そう思った。
「なぁ・・・おっさん達」
クラウンが後ろにいるので顔は見えなかったが、声からして・・・笑ってるだろう。
だが、おっさん=盗賊達は息を呑んでいた。それだけこの堀が緊張しているんだろう。
「こいつらに手ぇ出したら・・・許さねぇからな。だろ、クーリエ」
「・・・そうだな」
その言葉が、始まりになった。
男達が一斉に走り出す、目的は・・・誰が持ってるのかわからない羽根。
そんな男達を軽く蹴散らしていく少年二人。
その少年達をよく知ってる二人でも、その光景を唖然として見ていた。
エルフの後ろにいるクラウンは、後ろから襲ってきた男に下からしゃがんで顎に下段蹴りを一発
その隙をついて、もう一人体格のいい男がクラウンの顔めがけてパンチをしてきた。
それを軽々よけてその男の顔に肘を勢いつけてぶつけた。少し痛かったのか、クラウンは顔を歪めて声を上げる。
その声に反応して、男達は卑怯にも3人一緒に襲い掛かる。
「クラウン、危ない・・・ッッ!!」
シャイがそう叫ぶ。が、それを待っていたかのようにクラウンは笑った。そう、あれは演技だったのだ。
まず一人目の男の顔を掴み、二人目の男の頭とぶつけた。
残る男もついでに数珠繋ぎみたいに勢いよく二つの頭をぶつける
男達は3人とも倒れた。
「5人目かぁ・・・うっし、まだまだいくでー!!」
その言葉通り、クラウンは次々と男達を倒していく。
後ろから襲おうものなら、回し蹴りを食らわし撃退。はさみで襲おうものなら、高く飛んで男達が勝手にぶつかり自滅。そして上からクラウンの体が男達を直撃・・・撃退した。
まるでその動きは、サーカスで舞う道化師のようだ。笑顔の裏でどれだけ凄い事しているか・・・。
それは誰にもわからない、そうピエロだ。
「クラウン・・・大丈夫?」
不安そうに、シャイがつぶやく。その声が聞こえるのはきっと傍にいるエルフだけだろう。
その声はこの乱闘の声でかき消されそうに小さい。
「大丈夫だよッッ!だってあんなに押してるじゃない」
「うん・・・でも・・・」
シャイは、エルフの服のすそを掴んで震える。
シャイにはこの戦いはどのようにうつっているのだろう?クラウンの戦う姿はどう感じるのだろう?
エルフは・・・ただシャイの傍にいる事しか出来なかった。
次は、前に立っているクーリエの番。
しかし何故か彼の場合、男達が寄ってこない。躊躇というか、様子見というか、とにかく動かない。
クーリエも自分から動こうとしないタイプなので、まったく動かず欠伸までしてる。
「お、お前いけよ」
「な・・・!!お前こそいけよ!!」
いつの間にか、男達がお前が行けだの何だのと言い合い始めた。
クーリエはそんな光景がどう映ったのか、ため息をした。
「おおおお、お前らだらしないぞ!!お、俺が・・・みみみ、見本見せてやる」
そんな中、何故か足をブルブル震わせながら一人の男が出てきた。
この中で上の中くらぃのやつなのだろう・・・意地を張って前に一歩踏み出す。
後ろで男の部下であろう男達が尊敬の声を上げている。かっこいいだの、憧れるなどと・・・好き勝手言っている。
「あんたが・・・相手?」
だるそうにクーリエは質問する。質問というか、確かめというか・・・だってあんなに震えているのだから。
「そ、そうだ!!降参するなら、いいい、今のうちだぞ?」
なんて余裕の笑み(でも震えてる)浮かべて言ってきた。
もちろんクーリエは降参する気なんてさらさらなく、ため息で返事。
そんなクーリエの態度に何故か後ろの男達が苛立ち、口々に言い始める。やっちまえだの、ふざけるななど・・・自分達が相手じゃないからって。これじゃあ負け犬の遠吠えと同じである。
「で、では・・・いくぞ!!」
ようやく決意したのか、男がクーリエに突っ込んできた。正に言葉通り・・・タックルって言えばわかるだろうか。
意外にも男の力は強かったらしく、思いっきりくらったクーリエの体は後ろの方に下がる。
うん・・・下がっただけ。顔色変えずに埃を払って男の方を見る。
男はといえばよほど自分の力に自信があったのか、それとも支えていた意地が切れたのか。
顔を蒼白させて、気絶した。ぴくぴくと嫌に体が痙攣している。
後ろにいた男の部下達も、まさかこんな結末になろうとは思っていなかったらしく言葉を失う。
しかし・・・人間とは混乱すると何をしでかすかわからない、とはよく言ったものだ。一体誰がそんな事を言い出したのだろう。その人に会って、凄い発見だねって言ってあげたいとエルフは思った。
うおー!なんて大きな雄たけびを上げて、後ろにいた男達が襲ってきた。
クーリエは逃げるでも構えるでもなく・・・ただため息をついた。
(クーリエ・・・前から聞きたかったんだけど、何に対してため息ついてるの?)
まず後ろで行け行けなどと一番騒いでた男が、持っていたナイフでクーリエに切りかかる。
それを軽くよけてナイフを持つ手首を掴み捻る。そこへ鳩尾へ膝蹴りをいれる。
男は苦痛の表情を浮かべ、ナイフを離し倒れた。クーリエはそのナイフを拾うと、男達に向かって投げ飛ばした。
漫画で例えるなら、体が急に柔らかくなって全員が避ける感じだ・・・いや、正にそうだ。
男達が一斉に飛んできたナイフを避けて、非難の目をクーリエに向ける。
「物投げるなんて卑怯だぞてめぇ!!
なんて、グチグチといい始める男達・・・そのナイフを持っていたのは誰でもなく、あんた達の仲間では?
そんな言葉を今の男達に投げかけても意味はないだろう、クーリエは今日で何度目であろうため息をつく。
「・・・終わり?」
クーリエは面倒そうに前髪をかきあげた。男達にとって、このため息はとても腹が立つらしく額に血管が浮き出てる。
その後、先ほどまでの怯えはどこへやら・・・男達は目の色を変えて襲ってきた。
クーリエは、出来れば早く終わりたいな・・・と空を見上げて思ったが、その願いは聞き入れてくれなさそうだった。
「兄貴・・・ヤバイですぜ?やっぱりあいつら・・・兄貴?」
クーリエかクラウンにやられたのか、負傷した男が兄貴のもとへと駆け寄る。
兄貴に今の状況の報告のために来たのはいいものの・・・何故だか兄貴の様子が違う。負けているから焦っているんじゃなく、むしろ
勝ち誇ったような顔だった
「・・・くっ、羽根の力か」
「兄貴・・・どうし」
「おいお前・・・何やっている?とっとと行ってこねぇかッッ!!」
男は兄貴によって遠くへ吹き飛ばされる。
その光景はもの凄い音をたてて、騒がしかったこの場を静まり返らせた。
吹き飛ばされた男は、静かにその場に横たわっている。動きが見られない。
クラウンは急いで、その男の下へと走る。
大丈夫かと、男の体を揺らすも返事がない。だが息をきちんと行っているから、ただ気絶しただけのようだった。クラウンは安堵の息を吐き、兄貴の方を見る。
「何やっている・・・?お前ら・・・こんな弱い奴らも倒せねぇのか?」
前にあった兄貴とは違う・・・何かが違う。顔とか、そんなんじゃなくって・・・雰囲気が
弟分達は、そんな兄貴を不思議そうに見ている。
「誰が弱いやておっさんッッ!!お前ら現に俺に負けとるやん・・・何偉そうにほざいとる」
『弱い』の言葉に反応してか、クラウンが一歩前に出る。さっき庇った男の体が荒だたしく地面に落ちた。
クラウンは兄貴の変化に気付いてないのだろうか?それとも、気付いていながらの行動なのだろうか。
「負けて?はっ、それはお前らの勘違いだろう・・・現にお前らは負けている」
何を急に訳の分からぬ事を言い出すかと思いきや・・・自分達が負けている?
今の状況から見て、勝っているのは明らかクーリエたちの方だろう。倒れた数を見ても、強さからしても・・・
「お前・・・何言って」
「証拠を見せてやろう・・・羽根の力を受けてみよ小僧ッッ!!」
気がつけば
あたし達は負けていた
何にも気がつかなければ
勝っていたのだろうか
気付けばきっと負けなのだろう
next
後書き
はぃ!!
今回長くなってしまいました><;
書いてたら、まとまりがなくなって・・・もぅどうしようかと悩んでいたらこうなってしまいまして;;;
えっと、今回ゎ「戦い」がほとんどですねッッ!!
怜自身、こんなに戦闘シーン書くの初めてでどうしようかと漫画を見て研究しました、が!!
なんだろこの出来はッッ?!(ひでぶ!/何
本当に申し訳ないです><;
でわでわ今回はここで終わりです!!
また会える事を祈って・・・(^▽^)ノシ