綺麗な色
見たのは初めてじゃない気がする
それは懐かしく
それでいて儚い
そんな、存在


 

 

 

 

『輝く温かい翼』
 
  
何だったのだろう、今の光景は・・・。
皆倒れてる。クーリエもクラウンも、シャイも盗賊達も・・・エルフと兄貴を抜いた人たちが全員。
それでも兄貴は一人笑ってる・・・自分が最強だと笑ってる。
あれが、本当にエルフ達があった盗賊の兄貴なのか。自分の仲間をも傷つけて・・・なんで笑っていられる?
「クー・・・」
息はしている・・・でも言葉に反応を示さない。クラウンも、シャイを守るように倒れている。
皆何とか生きていた・・・でも酷い傷だった。
あの綺麗な湖も、木々も全て何かの力によって倒れている。あの教会も、すべてが。
「これが・・・羽根の力・・・凄い、凄いぞ!!」
兄貴の手元には、エルフから奪った羽根とクラウンの住処から奪った羽根が浮かんでいた。
羽根は、それぞれ色が違っていた。エルフから奪った羽根は金色、クラウンから奪ったのは黒に近い紫色。
そして、エルフが隠し持っているシャイの住処にあった羽根は、桃色。
「おい、お前・・・お前の持っている羽根をよこせ」
男は、エルフが隠し持っている事に気が付いたらしく強引にエルフから羽根を奪おうとする。
「い、いやッッ!!絶対嫌ったら嫌ッッ!!」
意地でも離すまいと、力を入れて逃げようとするが首を掴まれていて逃げようにも逃げられない。
兄貴の力が強いのは、人質になった時に立証済みで自分が力で勝てるわけも無く
「きゃっっ!!」
体を思いっきり、弾き飛ばされる。しかし、羽根だけは意地でも離さなかった・・・絶対に離さないと誓ったから。
 
 
 
「私が持つ・・・」
「は?ちょ、ちょぉ待て!!俺まだ発言してな」
「私だったら絶対に羽根を渡さないわ・・・それに盗賊達だって、まさか私に持たせるなんて思わないだろうし」
「・・・お前、危険」
「危険なのはわかってるわ・・・でもクーリエが守ってくれるでしょ?」
「・・・いつそんな事決まったんだ?」
「は・じ・め・か・ら!!ね、羽根は私が持つ。はい決定!!!・・・大丈夫、誰にも渡さないから」
 
 
 
あんなに啖呵切って約束したんだもん。絶対に手放すわけにはいかない。
「むかつくガキだな・・・さっさとよこせ!!」
こうなったら兄貴は実力行使だ。エルフの髪の毛を思いっきり掴んで無理やり立たせると、そこらにある木々に体をぶつけられる。痛い・・・体がミシミシと鳴っている。
生まれて初めてだった、こんな風に体をぶつけられたのは。否、日常茶飯事でもそれはそれでおかしいだろう・・・一国の王女が体を手荒く扱われるなんて。でも少し、こういうのにも慣れた方がいいのかな、なんておかしな考えが自分の脳裏に浮かんだ。
兄貴は何度も何度も、その行為を繰り返す。しかしエルフは一向に羽根から手を離さない。
「ちっ、くそガキッッ!!」
エルフを持つ手とは逆の手で、兄貴は顔めがけて拳を勢いよくふる。
殴られる・・・!!!そう思って、目を瞑り顔をそむけた。
「・・・え?」
拳があたらない。そのどころか、兄貴の手の力が弱まった。
ゆっくりとエルフを掴む手が離されていき、エルフは手から開放されその場にしゃがみこんだ。
こみ上げる呼吸に対応できず、咳き込み遠ざかっていた意識が戻りだした。
「て、てめぇ・・・!!」
兄貴は、後ろの人物に殴りかかるがあっさり避けられエルフと同じように木々に叩きつけられる。
それは、エルフのように手加減なんてものはない。叩きつけられた木々が、大きな音を立てて折れた。
「・・・言っただろ、この馬鹿に手ぇ出したら許さない」
「クー・・・ば、馬鹿って何よ!!」
後ろにいた男は、クーリエだった。
いつものように人の事を馬鹿呼ばわりして・・・思わず、反論してみたけどいつものように上手くいかない。
体に力が入らない、気がつけば震えが止まらずにいた。
クーリエは黙ったまま、エルフを庇うように抱きかかえると、安全圏だと思われる場所まで運んでくれた。
もうエルフは何も言えなかった。横には、何事もなかったかのように眠るシャイがいた。
「まったく、あの阿呆どないしたろ?」
「さぁな・・・」
何時の間にか、倒れていたはずのクラウンまでも起きていていた。
きっとここまでシャイを運んだのはクラウンだろう。シャイに覆いかぶさるようにローブがかけてある。
クラウンの声が笑っていた。笑っているけど、いつもと違う笑み。目が・・・笑ってない。そんな感じがした。
クラウンもクーリエも一度もエルフ達のほうを見なかった。見るのは、自分の大事な者を傷つけた男のみ。
「・・・どうしてやろうか?」
その一言で周りにある木々はざわめき始めた。羽根の力によって散らされた花びらが舞う。
確かにエルフの勘は当たった。
 
 
 
ここで何かが起こる
 
 
 
「どうしてやろうか?」その一言でその場の雰囲気が変わった
周りの空気は張り詰め、普通の人ならば今すぐにここを立ち去りたいと思うであろう
エルフは不安ながらにクーリエの様子を伺った。エルフ側からは、クーリエの顔は見えない。
しかし、表情はひしひしと伝わってくる。
「クー・・・」
エルフの言葉にもまったく耳を傾ける様子がない。
怖い・・・エルフの心を支配し始めた言葉・感情。
ガタガタと震える体を抑えるのがやっとで、とてもじゃないがここから動くことなど出来ない。
「うぅ〜ん・・・」
さっきまで倒れていたシャイが重たそうに体を起き上がらせた。その時やっとエルフの固まっていた体が動き出した。
「シャイちゃん、大丈夫?」
「お姉ちゃん・・・うん、大丈夫」
体を見る限り、どこか大きな怪我をしたという訳ではなさそうだ。きっとクラウンが庇ったのだろう。
「クラウンは・・・?」
クラウンがいない事に気がついたらしく、周りをキョロキョロと見渡している。
「クラウンなら・・・」
エルフは後ろにいるクラウンの方を見た。
先ほどから一歩も動いてない様子で、まったく変化がなかった。シャイはその光景を目にすると、体を震わせ始めた。
ビクビクと目に見えぬ何かに怯え・・・まるで先ほどまでの自分のようだとエルフは思った。
今のエルフは、シャイを守らなければという強い心があるからか先ほどよりはマシだった。
「・・・どう、なっちゃうんだろ?」
ずっと一緒だったというわけではない。だけど、この二人の事は少しは知ってるつもり。
だから言えるんだ・・・こんな空気は尋常じゃない。
 
「どうした?まだ一歩も動いてないだろ」
動けるわけなかった。先ほどの衝撃を喰らって、不用意に踏み込むなど出来るわけがない。
「怖いのか?俺が怖い」
「五月蝿いんだよ・・・あんた」
クーリエの声は男の言葉を遮った。その行動に腹が立ったのか、米神がピクリと動く。
どうやら兄貴の性格は、まだ残っているようだ。
「俺らは別にお前なん怖ないわ、お前こそ俺らの事怖いんとちゃう?」
クラウンは不敵な笑みともとれる笑顔をこぼした。それは余裕からか、はたまた怒りからか・・・。
男はまた米神をピクリと動かす。もう持たないな・・・。
「ふん、俺がお前らを怖がる?」
馬鹿馬鹿しいとでも言いたげな笑い声。確かに、あんな力をもったあんたは強いかもしれない。
だがな、完璧な強さなんて・・・この世にないんだ。完璧なんて、この世に存在しないんだ。
「やってみれば、分かることだろ」
クーリエは鬱陶しそうに前髪を掬い上げる。
「んな、始めるか」
クラウンは手に持っていた石ころを高く放り投げた。石ころは重力に逆らえずに落ちてくる。
それはまるでスローモーションのようだ・・・。
 
 
 
・・・・3
 
 
 
・・・・2
 
 
 
・・・・1
 
 
 
 
コツン
 
 
 
 
小さな戦いのゴングがなった。男達は一斉に飛び出した。
右からクーリエ、左からクラウンが男に詰め寄る。普段の彼らなら「2対1なんて卑怯」だとか何とか言って勝負なんて行わないだろう。それでも男は余裕といった表情を見せている。
男は迷わず左に向かっていく。まずはクラウンを狙ったようだ。
「ははは、猪突猛進なやつがッッ!!」
言葉通り、クラウンはまっすぐ男のもとへと突っ込んでいった。男は手に黒いオーラのようなものを作り、力いっぱい放り投げた。
クラウンは避ける事が出来ずそのオーラをモロに喰らってしまった。
「ぅが・・・っっ!!」
クラウンは、遠く遠くへ吹き飛ばされた。地面には彼が作った傷跡がくっきりと残っている。
大きな大きな、彼を引きずった後が・・・クラウンの周りを土煙が包む。
「ふん、次は貴様だッッ!!」
クルリと後ろを振り向くとまた同じように手にオーラを作りクーリエに向かって放り投げた。
「ぐっ・・・」
直撃とまではいかなかったが、相当の衝撃があったはずだ。クーリエは掠った腕を押さえ込む。
腕は赤く腫れ上がり、血が滲んでいる。
「クーッッ!クラウンッッ!!」
エルフはクーリエ達に駆け寄ろうとしたが、足が止まってしまった。
息が詰まりそうになっている。目が離せない、あの男から。
「そうだ・・・こいつが羽根を持ってるんだよな」
顎に手を乗せ、男は考え込んだ。何を考えているのか、簡単に想像する事が出来た。
男はまた不敵な笑みを浮かべると、エルフのもとへと一歩一歩近付いてくる。
エルフに庇われる形になっているシャイは酷く怯え、エルフもそこから動けなかった。
「こ、来ないでよ!」
来たって羽根は渡さない・・・そう決めている。だけど、来ないことに越したことはない。
「・・・そうか、わかった」
男はふと足を止めた。エルフ達は不思議そうに男を見つめる。
何がわかったのか、もう羽根を諦めてくれたのか・・・。
「・・・ッッ!!エルフ、逃げろッッ!!」
「え」
男はエルフ達に向かってオーラを投げてきた。先ほどよりも大きな大きな・・・とてもじゃないが避けきれない。
せめてシャイだけでも、とエルフはシャイを庇うように抱きかかえた。
 
 
 
とても綺麗な光を見た。
それはあたし達を庇うかのように包んでくれた。
とても暖かな光・・・。
大きな翼・・・とても綺麗で大きな。
「・・・クー?」
エルフは静かに倒れこんだ。
暖かなその翼に包まれて・・・・
 
 
 
 
 
  

 


まっすぐ突き進もう
もう後戻りは出来ないんだ
完璧な強さなんかなくっても
俺達は戦っていくんだ
大事な者を守り抜くために・・・

 

 




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後書き

はい、何が言いたいのやら・・・><;
戦いの書き方、ホントに誰か教えてください!!
もっとかっこよく書きたいんですよ〜!!
(グスン
っというか、もう皆さんこの「シャイちゃん編」飽きたと思うんですが・・・
もうちょっと待って下さい!!
思っていたより先に先にとなってしまって・・・自分でも悩んでおります;
うぅ・・・もっと勉強が必要ですね><;