小さな時に信じた事って
だいたい忘れてくもの
大きくなれば
夢を忘れていくの
手放すとダメだよ
忘れないためにも・・・






『旅立ちの満月』

あれからどれだけの時間が経っただろう?
時計を見ると時間はさほど経っていない
すごく長い時間が経ってる気がするのに・・・

私が見たのは、やっぱり天使だった
名前は『クーリエ』ちょっぴり無口な人
今、私の目の前にいる
「姫様・・・」
「うん、わかってる」
なんとしても取り返さなければ・・・
事の始まりは数分前
———

「天使だぁ!!」
「わかったからくっつくな!!」
あの時、クーリエと会ってから私はお城に案内したの
もちろん裏口から戻ってきたの
じぃはすごく驚いてた。どうしてって?
いつもは私一人で帰ってくるのに、今日に限ってが男の子がいたから
羽根はね・・・しばらくの間だけ隠せるんだって。
だからじぃは、初め天使だって知らなかったの
「はぁ・・・まさか本当に」
「ねっ、私の言ったとおりでしょ♪」
彼、クーリエから色々と聞いたの
天国はどんな所なのか、ここの世界はどう見えるとか・・・何しにここに来たのか
理由は羽根を捜しにきたとの事だった。
他の事は何も教えてくれなかった・・・企業秘密みたいのものらしい
羽根っていうのは、私が小さい頃に見つけたあの羽根の事
ずっと私が保管してたから見つからなかったのかな?
本当は、渡したくなかった。
だって、これがなくなったら・・・忘れてしまうかもしれない
また誰も信じてくれないかも
そう思うと胸が痛かった
けれど、神様が困ってるんだもの
私一人の理由で、断れないよ・・・

「こっちよ・・・この部屋に保管してあるの」
大きくて頑丈な扉
ここには代々伝わるものが眠ってるだとか、金銀財宝があるだとか
変な噂がたってるけど、本当は誰もほとんど近寄らないただの物置に過ぎない
羽根をここにしまった理由も、ここだと誰にも見つからないと思ったから
「埃っぽくってごめんね、誰も出入りしないから」
「別にいい」
会ってほとんど時間も経ってないのに、もうお別れか
寂しいな・・・

「ひ、姫様!!」
扉の奥から何かが割れる音、ううん破壊される音が聞こえた
この扉以外に入れる所はない。窓もないのだから
もちろんここの扉はしまってる。鍵は今じぃが持ってるからありえない事でわあるけれど
「侵入者?!でもどうやって?」
「とにかく、開けてみます!!」
じぃが急いで何十個もある鍵から必死に探している
じぃには悪いけど、もっと早くなんないかなぁ?!
それより、なんでこんなに鍵たくさんあるの?一つでいいじゃない?!
いつも見慣れてる風景とはいえ、なんか無性に苛立ってくる
「少し・・・離れてろ」
ふと、クーリエが私達より一歩前に出た
何するんだろう?ピッキングでもするのかな?(何故一国の王女がその名前を!?)
もしかしてこの扉を壊すつもり?!
「ねぇクーリエ無理だよ!!この扉凄く頑丈で」
言葉の終わりを私は飲み込んだ
目の前にあった頑丈な扉は、彼の蹴った部分が粉々になっていた
クーリエ・・・あなたって意外に力強かったのね
「な、なんだぁ?!今の音は」
「親分、どうしやす!?」
「目当ての物は手に入れた、逃げるぞ!!」
部屋の置奥から、男達の声が聞こえてきた

目当ての物って何?何をとったの?

「こらーーー
!!待て泥棒—————!!」
なんだかわからないけど、私は犯人っぽい人達を追いかけていた
犯人達は自分達で作ったと思われる大きな穴から逃げ出そうとしていた
もちろんここは、普通の家で4階相当の高さだからヘリで逃げ出そうとしている
「逃げるなんて卑怯だぁ!!」
私はそれでも犯人達を追いかけ、穴から飛び出し
「おい、死ぬ気かお前!!」
そうになった所をクーリエに助けられた。
そうだった・・・私はヘリみたく飛べないんだった
普通の人ならわかる事を私は忘れていた。危ない危ない。
「ひ、姫様
!!大変です!!」
大変が大変と重なって大変を呼ぶ・・・まさにそんな状況
私の、クーリエの、神様の大切な羽根が
あの男達によって・・・盗まれた

そして、今
「だ〜か〜ら〜ッッ
!!私が行くって言ってるでしょ!!」
「ダメだと言っているでしょぅ?!姫様が盗賊共の所へ行くなどと」
「私が行かなきゃ誰が行くっていうのよ?!」
「この男めが行くでしょうに!!」
「クーリエはここに来て、まだ何も知らない赤子当然の人よ!そんなの出来るわけないでしょう?!」
私はじぃと言い争っっていた
じぃってば、私が行くっていうのに聞かなくって・・・
あの後、私達はこれからどうするかを話すことにした
けれど出てくるのが、行く&ダメの二言だけ
何の話し合いにもなってないのが現状なのだ・・・
クーリエはそんな私達の言い合いをただ眺めている

今はもう夜・・・幸いあんな大事件だったのにも関わらず誰にも気付かれていなかった
だからクーリエも普通の顔で私の部屋に入れるわけだけども
今は力がなくなって(夜になると羽根が隠せなくなるらしい)元に戻ってるからホッとしてる
これで見つかったら世間のさらし者・・・
私的には皆にクーリエが天使だって紹介したいけど、そんな風になるのは嫌だからね

「ところで姫様、自分が行くと言い張っておりますが・・・」
「何よ?」
「奴達の居場所・・・知ってるのですか?」
しばらくの沈黙が流れた
じぃは私をじっと見て「やはり」というようなため息をついた
クーリエは額を押さえて唸っていた
だってだって!!あんな奴達誰かも知らないのに、居場所なんて・・・
そ、そうですよ!居場所も知らずに行くと言い張ってましたよ!!悪い?(逆ギレ?
「はぁ、もう夜だし・・・また明日考えましょう。クーリエもその姿じゃ、ウロウロできないし」
「そうですな・・・」

真っ暗な夜・・・照らすのは大きな満月
今日はなかなか眠れなかった
まだ、興奮してる?
そうだよね、天使にあったり泥棒がはいったり・・・今日は色々あったから

ふと、窓の方を見てみるとクーリエが窓から空を眺めていた
その光景がすごく綺麗で、思わず見とれてしまう
静かにゆれるカーテン、月明かりで照らされるクーリエ
金髪の尻尾髪がキラキラ光って
なんだか彼の表情が和らいで見えた
「・・・眠れないのか?」
「ちょっと、ね」
彼は、私の視線に気が付いたようで話かけてきた
さっきまでの顔とは違って、キリっとした表情
けれど、初めて会った時とは違って見えた
「何見てたの?」
「・・・空、見てた」
そう言うと、彼は空に向かって手を伸ばした
私達から見える月や雲、とても近くに感じるのに
手を伸ばすと、その違いを知ることになる
「不思議だね・・・こんなに近くに感じるのに」
「遠いんだな」

クーリエは何を思って、空を見てたんだろ
自分の住む場所を思って見てたのかな?
クーリエにとって初めての下界
私にとっては慣れた地上
こんなに近くにいるのに、やっぱり遠い存在なんだね

「ねぇ!!今、脱走しちゃわない?」
「はぁ?!」
今ならじぃもいないし、こんな夜中だから人もいない
ドントウォーリーってやつよ♪
「あいつらの居場所もわかってないんだろう?」
「そんなの後で考えてもいいじゃない!!ほら、行こう」


 
 

 

旅立ちの瞬間
それは突然で
誰にも気付かれないように
その旅は始まった

 

 

  


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後書き

はい、今から旅に行きますのね(誰)
今回は、大事なものの存在とエルフとクーリエの二人の近くって遠い存在っていうのを話したかったんです
空を見てるとそういう風に感じる事ってありません?怜は夕暮れ見てると無性に思うんですよ
夜空もたくさんの星の時は思わず手を上にかざしたり、はたから見れば変人です
()
そして、大事なものは一人一つくらい持ってると思うんです。
それは、物だけじゃなくって人だったり動物だったり・・・
そんな当たり前の事を、今回はエルフで語ってみたりしちゃいました(苦笑)
大事なものの存在が、どれほどのものか・・・考えてみるのもいいかもしれません
今回は大人しめな、そして変人な
()アユミでした!!
でゎ・、次にまた会えることを・・・
(^^)ノシ