満月の夜
落ち着かないのは何故だろう
何の記憶もない
何も知らないハズ
なのに月は何かを語っている気がする
この月は何かを知っている?
俺に語りかけている?
『月が知るは皆の寝顔だけ?』
こんなに遠いのだろうか
クーリエは何もない草原をただ呆然と眺めていた
クラウンと出会って、何十時間経過しただろう?
未だに何も見えてこない
ゆっくりと放牧されている牛と馬が、クーリエの前を通過する
「おい・・・」
ゆっくり振り返ると、牛にかこまれ馬に蹴飛ばされあたふたするクラウンがいた
クラウンは牛を見るのが初めてらしく、心底珍しげだ
そして牛も、そんな目で見るクラウンを鬱陶しく見ている
「本当にこっちであってるのか?」
クーリエは馬に突進されているクラウンを助けず、尋ねた
走りながら疑問だった
ずっと同じ方向に走り続けているのに・・・何も見えてこない
見えてきたのは、この牛と馬達
街なんて見えてくる気配すらない
「お前もそのくちか・・・」
以前にいた、道に迷う案内人
そいつを思い出すのは何故だろう
そして、道も知らないくせに突き進んでいくあのバカ娘
どっちもいい思い出といえないな・・・
「あん?あってるでぇ・・・ってお前痛いっちゅうねん!!」
今度は顔を牛にかまれていた
背中は相変わらず馬に蹴飛ばされている
「俺のいた町からずーっとまっすぐにあんねん。まぁちょい遠いかなぁ…あだっ!!」
とうとうクラウンは牛にも体当たりされ、馬に踏まれてしまった
もう袋叩き同様の状態である
それでもクーリエは何もしなかった
面倒な事は関わらないのが一番、それが彼のポリシーである(らしい)
「まだ先か・・・」
クーリエは何もない草原を眺める
クラウンと会って、ここに止まり続けて何時間が経つだろう?
牛に囲まれ馬に蹴飛ばされ、あいつは何をしている
・・・今は聞かない方がいいのかもな
クーリエの視線の先には、ぼろぼろになったクラウンが倒れていた
牛と馬達は満足したのか方々へと散っていく
その日の夜
結局目的地にたどりつけず、野宿をする事になった
「だぁーー!!今日は流石にたどり着かなかったなぁ・・・」
「そんなに遠いのか?」
「ん?そうやなぁ…バスとか電車とかあればいいんやけど、何せ田舎やし」
クラウンが言うには、ここから次の街へは2日からかかるという
クラウンの速さで2日だから・・・他の人は3〜4日はかかるだろう;
そしてこの街とは交流があまりなく、交通手段も歩きしかないのだとか
「まぁ…明日には絶対つくから安心しぃ」
そういうと、クラウンはその場に寝転び空を見上げ呟く
「遠いな・・・」
夜空へと手をかざすその表情からは、先ほどまでの明るい表情は消えていた
暗く、何かを思いつめた表情
そうクーリエは感じた
「なぁ…聞いていいか?」
クーリエも同じように寝転ぶ
クラウンは笑顔で振り返り返答する
「何で、俺達に羽根を?」
その質問にクラウンは一瞬表情を変えたが、すぐいつもの笑顔に戻し答えた
「ずっとこんな役割してたらな…見えなくっていいもんが見えたりするんや。例えば…」
クラウンはクーリエの背中を指差し笑みをこぼす
「あんたの背中についてる羽根とかな」
クーリエは顔色を変えなかった
わかっていたといえば嘘になる。だが、感じていたのかもしれない
こいつの違和感を・・・
「なんや、もっと驚くんかと思って期待したっちゅうねん!!顔色ひとつ変えんと・・・おもんないなぁ」
「俺にそんなの求めるな」
俺に求められても困るだけ
この今の表情を変えた記憶なんて・・・俺にはない
笑った事なんてあったのだろうか?
記憶をたどるが・・・やはりない
「クーはいい顔持ってるんやから、こうニコッと!!」
何故だか笑顔を求めてくるクラウン
顔に手をあて笑顔をみせてくる
クーリエはそれを無視し、反対側を向こうと寝返りをうとうとしたが
「こら!一緒に練習やッッ!!ほら…こ〜うやって!!」
「っだ!!ひゃ、ひゃめろッッ…!!」
顔をおもいっきり抓られ笑顔の練習
クラウンはそんなクーリエの表情を見て大爆笑
クーリエの頬は赤く染まり痛々しい
「…こんの馬鹿野郎!!」
「いだっ!!」
静かな夜の草原が、この二人がいるだけで騒がしい夜へと変化した
さっきまでの騒がしさはどこへやら
今は虫の鳴き声しか聞こえない
それは静かで、上でいた時の事を思い出す
あの時と同じ・・・静かな月の大きい夜
満月ではないけれど、大きな月をクーリエは見つめていた
「なんや…眠れんのか?」
さっきまで、大口開けて寝ていたクラウンが目をこすりながら起きてきた
きちんと寝なくては明日体力が持たない!とクラウンに怒られ、渋々眠りについたが
冴えきった目が眠る事を許さなかった
仕方なく一人起きていようと、立ち上がった
その時・・・ふと、月が目に入った
大きな大きな月
光り輝く未だ誰も近付く事の出来ない楽園
そう、クーリエは上で習った
「あいつが…眠らさせてくれないんだ」
「あいつ?」
クーリエは顎であいつをさす
クラウンは一瞬訳がわからず、目を何度も瞬きしていたが
しばらくするといつもと同じ、だけどいつもより優しい笑みを浮かべ
「そっか…わがままなんやな、あいつも」
二人が見るは、広い草原に大きく存在する月
この世の誰もが知ってる・・・大きな存在
雨の中、少女は叫んだ
もうやめて…やめて
だが、声にならない
誰も聞いてくれない
誰にも聞こえない
少女は泣いた
もうだめなの・・・?
少女は泣き続けた
その涙は雨に存在を消された
誰も少女に気付かない
少女は・・・もう何も言わなかった
「・・・あれは、何だ?」
変な夢・・・そんな感想しか生まれない
クーリエは不思議な夢を見た。少女の夢を・・・
少女が泣いてる夢
クーリエには聞こえた叫び声
なのに、手を差し伸べることが出来なかった
何も出来なかった
そんな自分が腹立たしく思っている
たかが夢なのに・・・こんなにも悔しい
「ん・・・おっ、おはようさん!!ちゃんと寝れたか?」
朝から騒がしい男が起きた
昨日あれから急に眠気に襲われ二人して、死んだように眠ってしまった
疲れていたんだろうと大して気にはしない
だが・・・夢見が悪いのは流石に腹が立つ
「・・・なんだ?」
気が付けばクラウンがじーっとクーリエの顔を眺めていた
眺めていたというより、眉間にしわ寄せ睨んでいるに近かった
「なぁクー・・・お前寝不足でそんな顔なってんちゃうん?」
もの凄い真剣な顔でその言葉か・・・
クーリエは額に手をあてため息をついた
「そんな事より、今日で本当に着くんだろうな?」
「おうまっかして!今日中に着くさかい!!」
その言葉・・・果たして本当に信じていいのか
人を信じて、いい経験をした事がないクーリエとしては心配だった
旅に休息は必要
ゆっくり頭も体も休めよ
明日から続く戦いのため
戦い抜く力をつけるためにも
守る力をつけるためにも
いつかくる戦いの日に備え
自分を守るためにも
next
後書き
はい、また意味不明な終わり方です
今日もテーマは決めていたんですが・・・すみません
ここでは語れません;;;
語ればネタバレっていうのもありますが、怜自身経験した事がなく
考え付かないので・・・今日は本当に感想で!!
えっとですねぇ、二人実は似てるんじゃないかって思いました
話を考えているうちに「うわ、ヤバイ!!かぶるってキャラ!」
などと心配してしまった怜でしたが・・・その心配は無用っぽいですね;
大丈夫な感じです^▽^;ホッ
っと変な感想になりましたが!!でわでわ次また会える事を・・